子どもがやりたい職業を体験し、給料を稼ぐことを遊びとして体験できる商業施設「キッザニア」が2006年秋にオープンし、子どもたちに「働くことの喜びや意味、人々が働くことで成り立つ社会や経済」を体験させるよい機会であると注目されている。多くの企業が協賛し、子どもたちが体験する職業に関わる仕事のノウハウ、コスチューム、看板や店構え、スタッフの振る舞いなど、子どもたちは本物そっくりの環境の中で憧れの仕事を疑似体験することができる。
一方、ドイツのミュンヘンで20年以上にわたって続けられている「遊びのまち ミニミュンヘン」もまた、子どもたちが好きな仕事で稼ぐ子どものまちである。こちらも多くの協賛企業が支える一方、行政も4割の経費負担をし、NPOが運営する。2年に1度の夏休み、1ヶ月に渡って子どもたちは市民として「ミニミュンヘン」というまちを自治し、まちを日々変化させて行くことができる。
ミニミュンヘンとキッザニア。どちらも生き生きと働く子どもたちの姿がみられる「子どもだけが働いて稼ぐことのできる“子どものまち”」であり、ここでの子どもたちの活動を「遊び(=楽しみが目的の活動)」と位置づけている。
日本でも「ミニミュンヘン」に触発された取り組みが広がっている。「ミニミュンヘン」を見習った「ミニさくら」「ミニいちかわ」という5年〜6年越しの取組みが続けられ、企画、準備や毎日の場の片付けなど、舞台のオモテもウラも子ども自身が深く関わっていく変化が見られるなか、三重県四日市市 の「こども四日市」では、20年の活動をバックボーンに、親方制度と言う独特の日本らしいシステムが動いている。また、ミニさくらもこども四日市も、それぞれ地域性を折り込んで、地元商店街に温かく受け入れられてきた。地元商店街が受け入れることが逆に、地元商店街を元気づけていることも見逃せない。
子どもたちが現在置かれた生活環境に、広い人間関係、必要とされる活躍の場、自発的な遊びの機会が用意され、子どもたちが学習成績以外の自己尊重の基準が生まれ、夢を持ち、自分の意志で行動し、主役になることができる。そういった日本各地の取組みはいずれも「ミニミュンヘン」や「キッザニア」と同様、子どもたちが主体的に生き生きと働き活躍する姿を、世の中に強くアピールし、子どもの遊びの大切さを訴える。
今回、「キッザニア」を日本にもたらした、株式会社キッズシティージャパンの住谷社長、そして「ミニミュンヘン」の創設メンバーであり、現在も主催団体を率いるゲルト・グリューナイスル氏、このお二人に、日本の“子どものまち”発祥の地の一つである佐倉市で、それぞれの事業に取り組まれた思いや目的、子どもたちへの願い、子ども観、そして互いに共感する事柄を語っていただきたい。
そのことによって、二つの“子どものまち”の共通点と相違点がおぼろげながらにでも見えてくれば、今日の子どもたちが置かれた状況、子どもたちを取り巻く環境、社会の中で、それらをよりいっそう変える力になるのではないか、と期待するものである。
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